和歌山県西牟婁郡白浜町にある安宅勝山城。
南北朝時代~戦国時代にかけて熊野水軍として活躍した安宅氏が築いた山城。
安宅氏の城館群の中で最も高い標高212mに築かれ、領内や海上を見渡す事が出来るようになっています。
麓の安宅の湊からでも勝山城を遠望する事が出来るので、安宅氏の権力を誇示する山城であったと考えられています。
久木小山家文書の畠山尚慶の書状で安宅南要害と書かれていて、戦国時代に畠山氏の内紛の舞台となっていたと推定されています。
現在でも山頂部の曲輪跡や尾根の三方向に築かれた堀切、特に東側の石積みが施された五連続堀切があり、見どころとなっています。
安宅勝山城・基本情報、アクセス
所在地:〒649‐2525 和歌山県西牟婁郡白浜町塩野
城 主:安宅氏
形 式:山城・連郭式
文化財史跡:ー
日本100名城スタンプ:該当なし
安宅勝山城・駐車場

安宅勝山城に専用駐車場はありません。
安宅勝山城の西側にある日生神社に、2台程停められる駐車スペースはあります。
日生神社の前の道路は狭く、軽自動車か5ナンバーの車であれば通れる位です。
トイレはないので、紀伊日置駅のトイレを利用すると良いでしょう。
安宅勝山城・縄張り図

安宅勝山城は安宅氏館から南に500m程の山に築かれている山城です。
標高212mの山頂部に曲輪1と曲輪2があり、曲輪2では石積みが施された跡が見受けられます。
東の尾根にはすさみ(周参見荘)方面からの侵攻を備えて石積みが施された五重の堀切、南の尾根には三重の堀切が築かれています。
安宅勝山城・登城口
登山口

安宅勝山城の南西側に登山口があります。
大きく赤い矢印が書かれた案内板が目印となります。
登山口から曲輪1までは1時間程掛かり、道もあまり整備されていないので、計画的な登山が必要となります。
登山道①

登山口を進むと冬でもシダの葉が生い茂る道となります。
基本的に畑のレールに沿って登って行きながら、途中にある案内板を目印にします。
足場が悪くシダの葉で足元や道も見えないので、かなり山歩きに慣れた人でないと厳しいかも知れません。
登山道②

シダの葉ゾーンを抜けると草はあまり生えていない山肌の道になります。
ここからはうっすらと道が続いているのが分かるので、一般的な山城の登山道となっています。
安宅勝山城・曲輪2
堀切①

登山道を登って行くと安宅勝山城の南側の堀切が見えて来ます。
最初の堀切は全長35m程あり、風雨による劣化により深さはそこまでありませんが、奥の堀切との高低差はかなりあります。
堀切②

南側尾根の2本目の堀切は全長が40m程あります。
堀切は岩盤が見えている部分があり、岩を削って造られた事が分かります。
南側の尾根の堀切は見学通路が見当たらない為、斜面を登っていく事になります。
堀切③

南側尾根の3本目の堀切は全長が53m程あります。
南側の尾根に築かれている堀切の中で最も大きく、深さもしっかりとあり両端は斜面を落ちて竪堀となる様子が分かります。
南側尾根に築かれている三重に築かれた堀切は高低差があり、良好に残されていて見どころです。
曲輪2内部

南側尾根の三重堀切の先に曲輪2があります。
曲輪2は南北25m、東西13mの大きさで、北側と東側には大きな土塁が残されています。
西側に虎口跡と思われる窪みがあり、曲輪内には石が散乱しています。
石積み跡

曲輪2の東側の土塁には石段があったと思われる跡があります。
発掘調査により石段は土塁の上に登る為のものと推定され、付近の土塁からは柵の柱跡が確認されていており、曲輪の周囲に柵が巡らされていたと考えられています。
また、柵の外側に建物の跡があり、簡易的な見張り台が建てられていたとされます。
安宅勝山城・曲輪1
曲輪1内部

曲輪2の北側に曲輪1があります。
曲輪1は曲輪2よりも5m程高い場所にあり、南北23m、東西10m程の大きさの曲輪となっています。
周囲には土塁が築かれていて、波模様が描かれた陶磁器の青磁椀の欠片が発見されています。
景色

曲輪1の北側は視界が開けていて、安宅氏居館や安宅八幡山城、日置川を一望する事が出来ます。
安宅氏の領内を一望する事ができ、絶好の場所に安宅勝山城が築かれていることが分かります。
東側の堀切への道

曲輪1の東側から東側尾根に築かれている五重堀切の場所に行くことが出来ます。
ロープが張られている場所が目印となっていて、ロープを伝って斜面を降ります。
堀切①

東側尾根には五重堀切が築かれています。
敵が侵攻してくる東側に五重堀切が築かれていて、堀切には土留めの石積みが施されています。
一つひとつの堀切はそこまで大きくないですが、石積みが施された五重堀切は全国的に見ても珍しい遺構で、見どころです。
堀切②

少々危険ですが二重目以降の堀切へも行くことが出来ます。
それぞれの堀切の深さは1~2m程とそれほど深くはありませんが、石造りの連続した堀切は異様で見応えがあります。
堀切③

堀切の石積みは風雨により一部が散乱してしまっていますが、土留め補強の石積みのおかげで現在でも良好に五重堀切が残されているのでしょうか。
土塁の土留めの為の石積みは、安宅氏の城館に共通して見られる築城技術のようです。
堀切④

五重堀切全てに石積みが施されていて、安宅勝山城が東側の防備に力を入れて築城した事が分かります。
東側尾根の五重堀切は圧巻で、安宅勝山城に来たら絶対見ておきたい遺構となっています。
まとめ

【安宅勝山城の見どころ】
・東側尾根に築かれている石積みが施された五重堀切
・南側尾根に築かれている規模が大きい三重堀切
・曲輪1の北側から一望できる安宅氏の城館群
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